2016年3月31日木曜日

5-7 米中は戦争しようとしている。 ???

 アメリカと日本の学者の中では、経済力の増大が軍事力の増大を生み、それが軍事的覇権争いを不可避にするという「リアリズム」の見方が影響力を増しています。中国経済が拡大し、早ければ2025年にはアメリカの規模を追い抜くという予測もあります。そうなれば、世界第一位の規模の経済を持つ中国は、それに見合った軍事力を持つようになり、東アジアからアメリカの影響力を排除しようとする、アメリカはそれを拒む、そこで、米中戦争が不可避になるという見方です。

 しかし、中国の経済発展は、大きな部分をアメリカからの投資とアメリカへの輸出で可能になりました。もし、アメリカと戦争を起こせば、中国は自ら経済を崩壊させる選択をすることになります(#3-③参照)。中国がアメリカへの輸出に依存しない内需主導型の経済発展に転換するのが、いかに困難かは、日本経済が、バブルの時代以来、結局それを実現できなかったことからも明らかです。また、中国の経済成長率は低下していくことが見込まれるようになりました。先進国になりきれないいわゆる「中進国の罠」に陥りつつあります。

 現在、アメリカの軍事力は中国を圧倒しています。例えば、国際的な軍事研究機関・ストックホルム国際平和研究所の報告では、2014年の世界全体の軍事費の34%をアメリカ合衆国が占めていて、次いで多い中国は12%とその半分以下です。中国がアメリカと正面から戦争する可能性は極めて低い状況です。また、アメリカも中国との戦争は、経済相互依存の状況で、自らへの打撃が甚大になるから、避けようとします。米中は、一触即発の軍事緊張状態にあるのではありません。(佐藤・星野)

この検証へのリンク:http://okidemaproject.blogspot.jp/2016/03/5-7.html